●「武器使用」と「武力行使」
最初に、「武器使用基準」について確認。防衛省担当者からは、「海上警備行動において、武器を使用せざるを得ない場合のための武器使用基準は、部隊が判断に迷うことのないように作成している。新法に基づく派遣に際しても、武器使用の考え方について作成し、具体的に派遣部隊に示す。」との答弁。
「武力行使」について内閣法制局長官に確認。『武力行使』に該当する要件は、第一に、国家の物的・人的組織体が、第二に、『国又は国に準ずる者』に対して武器を使用する、という二つの要件が必要であるとの理解でよいか、と。
長官からは「憲法第九条第一項に規定する『武力の行使』とは、ご指摘のとおり。」と。また、『国家の物的・人的組織隊』には海上保安庁も含まれるのか?」との質問には、「海上保安庁も排除されるものではない。」との重要な答弁。
●【海賊行為】を如何に判断するのか?
法案では、武器使用の要件が緩和され、「制止に従わず、【海賊行為】をする目的で著しく接近する船舶等に対して船体射撃をすること」が認められている。「(『武力行使』につながりかねない)『国又は国に準ずる者』が【海賊行為】を行う可能性」「【海賊行為】の見極め方」について問う。
政府参考人からは、「本法では、【海賊行為】を、私人による、『私的目的』の犯罪行為と定義している。『暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為』など、細かく具体的に規定している。背景事情の確認、得られる情報等による判断。」との答弁。さらに、「『私的目的』かどうか、はどう判断するのか?」との質問には、「これまでの海賊事案を踏まえ、船舶の外観、航行の態様、乗組員の異常な挙動、その他の周囲の事情等を勘案して、合理的に判断する。」とのこと。 ???
また、「法律の曖昧な基準に沿って【海賊行為】と判断し、武器使用を行った結果、それがテロリストや『国又は国に準じる者』であった場合、憲法で禁じている『武力行使』に該当する場合もあるのでは?」との問いに、内閣法制局長官は「【海賊行為】とは、第一に、私人(私的船舶)による、第二に、『私的目的』で、第三に、公海上で行われるもの、と定義している。このように定義する【海賊行為】を行う船舶に対して、所定の法令の範囲内で武器使用を行うことは、憲法で禁ずる『武力行使』には当たるものではない。」との重要な見解を示す。
「立入検査」についても確認。法案でも、海上自衛隊あるいは海上保安庁に対して権限として与えられている「立入検査」についても確認。「武器使用」との関係は明らかにされなかった…。
定義上の議論に終始するが、規定や手順が曖昧。現場で、【海賊行為】との見極めは難しい。海賊行為との断定が出来ない段階での武器使用は、『国又は国に準ずる者』への武器使用、すなわち憲法で禁ずる『武力行使』にあたる可能性、国際紛争に発展する恐れも排除できない。これでは、現場での判断や対応に迷いが生じるとの懸念が拭えない。
●海上保安庁の役割とは?
最後に、「海保が担うべき海賊対処について、どこまでの範囲をどのような装備で行うのか?」を質す。金子大臣からは、「すべての海域において、海賊への対処は、第一義的には海保の役割と認識。海賊がどのような武器を所持しているか、どのような状況かの判断による。」との答弁。わが国にとって不可欠な海上輸送の安全、それを脅かす海賊への対処を第一義的に担う海洋担当大臣(国交大臣)の決意も弱く…。(今の政権に期待すること自体にムリがある?)
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