●これまでのわが国の観光政策
昭和38年、今回同様に議員立法として、わが国の「観光」に関する方向性を示す「観光基本法」が制定されたが、当時と比較して「観光」を取り巻く今日の状況は大きく変化している。法律制定時には、「@外国人観光客の増加による外貨獲得、A観光旅行による国民の生活の緊張緩和、B勤労意欲の増進」などが「観光」の主な意義と考えられていたが、その後、日本経済の発展に伴い、日本人の国内旅行者数が増大するとともに、訪日外国人旅行者数も伸び、観光分野も大きく伸長した。
この間、国際収支のバランス改善などの観点から、昭和62年に日本人海外旅行者数を1,000万人に増やすというテンミリオン計画が策定されたが、近年は日本人海外旅行者数と外国人訪日旅行者数のアンバランスが顕著となり、外国人訪日旅行者数の増加を図る必要性が認識されるようになった。
平成15年には、小泉総理が約500万人にとどまっている訪日外国人旅行者を平成22年までに1,000万人に倍増させることを目標に定め、観光立国関係閣僚会議において「観光立国行動計画」を策定し、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」等を展開しつつ、現在にいたっている。
国内観光については、戦後の高度経済成長とともにレジャーの大衆化が進み、温泉地等への団体旅行を中心として急拡大したが、近年は、「名所見物型」から、個人や少人数による多様なニーズを持った「参加・体験型」へと変わり、国内旅行を取り巻く環境は大きく変化した。国内観光振興も大きな課題となっている
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●法案提出の目的
今日の「観光」は、「@潤いある豊かな生活環境の創造を通じ、国民生活の安定向上に貢献、Aより良い観光地づくりへの取り組みによる地域の活性化、B観光交流等を通じた国際相互理解の増進」などの意義を持つものと認識されるようになった。
そのような中で、「観光」を21世紀におけるわが国の重要な産業として、また政策の柱として明確に位置付け、観光立国実現のために、基本理念を定め、国と地方公共団体の役割を明らかにし、観光立国の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進しようとの観点から、与野党の垣根を越えた有志議員が揃って「観光立国推進基本法」を提出した。
民主党では「観光政策推進調査会(渡部恒三座長)」において、「@住民が地域に誇りと愛着を持ち、持続性の高い観光地をつくる、A短期的な経済効果にとらわれず、交流人口を増やすことで長期的かつ総合的な視点からの地域の活性化を図る、B国が一律に考えるのではなく、あくまでも地域主権が大前提である、C環境に充分配慮すべき」等々の基本的な考え方を取りまとめたが、これらの主張は与党とのねばり強い交渉の結果、法律の中にほとんどすべてが盛り込まれることとなった。
今後は、「観光立国推進基本法」の精神が効果的に施策として実施されるよう、また委員会質疑等を通じて付随する関連法が整備され、予算措置が講じられるようしっかりとチェックしていく
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